食と農のリテラシーブログ

主に農業のことを書いていきます

日本の食糧安全保障について

「儲かる農業」を目指すと必然的にコメから離れる。

野菜や果樹、花で儲けようとする。

しかし野菜や果物では十分腹はふくれない。

しかも水田をやめると収量はすぐには戻らない。

食料安全保障が大幅に弱まるのだ。 

 

勝手に尊敬している研究者の篠原信さんの発言です。

これまで上手く言語化できなかったものを言い表してくれた気がするので頭の整理がてら書いていこうと思います。

 

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主食と呼ばれるものは基本的に余る程度に十分な量を生産します。

主食とは、主たるエネルギー源となるものなので

余っていないと価格が高騰し暴動が起こるからです。

水も同じです。

 

日本の主食は一応コメだとされています。

現在は小麦の流入量が多くなってきて、

パンや麺類など小麦でエネルギーの大半を摂取してる人も多いかもしれませんが、

日本の主食はコメです。

梅雨のある日本は小麦の栽培に向かないからです(だから北海道では良質の小麦を作ることができる)。

 

社会が安定している時コメは買い叩かれます。

というか安く据え置かれます。

なので篠原さんがおっしゃるように、

『儲かる農業』を目指すとなると

必然的にコメから離れ、

付加価値や単価の高い『野菜・果樹・花卉(かき)』に重点を置くようになります。

だってコメ安いんやもん。

一事業者としての目標である収益の極大化にあたりその判断は間違っていません。

 

 

 

このまま社会が安定で平穏な状態が続き、

『コメが足りなくなっても外国から買える』

『コメが足りなければ小麦でいいじゃない』

が成立するのであればいいのですが、

万が一の事態(例えば輸入がストップするとか)が絶対起こらないとは言い切れません。

というか、日本経済も世界経済も世界の気候も不安定な中、

万が一が起こる蓋然性は着実に高まってきていると思います。

そうでなかったとしても"何か"があった際、

国民の生命を維持するために食糧の確保は必須です。

政府もコメの備蓄を行っていますが、

それは緊急時の対処であって恒久的な事象への解決策とはなり得ません。

 

 

ゆえに欧米各国は政府が補助金を用いて農家の経営安定に資しています。

各国の農業政策については明るくないので人の主張を勝手に引っ張ってきますが、

経済評論家の三橋貴明氏はブログで日本の農業補助金が少ないことを訴えています。

ひとつひとつ吟味したわけじゃないので鵜呑みにできませんが、

アメリカの小麦やトウモロコシ、大豆等の価格競争力の一因が補助金であることは確かです。

アメリカの農業補助金についてはココが詳しい(後でじっくり読む))

http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/project/pdf/obei-4.pdf

言いたかったのは、

「他国は補助金で農業経営を支援して食糧安保を確保していますよ」

ということです。

アメリカは世界的な戦略の一環だったりするのですがそれはさておくことにします。

 

 

 

戻ってきました。

日本です。

日本農政は食糧安保的な観点が非常に希薄な気がします。

『儲かる農業を!強い農業を!』

と煽れば煽るほど、

農家はコメ等の単価の低い作物から離れ、

コメ農家はコメの単価を上げるために邁進します。

結果、日本の食糧安全保障が危ぶまれることとなります。

 

 

煽ってる場合じゃないから。

 

 

政府は頑張ってもらうとして、

官がダメなら民なのですが、

民間の農業に関わるサービスを提供している事業者たちも

如何に高単価で売るかに軸足が置かれ過ぎている気がします。

確かに

『特別な日に特別なものを(食で)』

という要望はありますが、

大多数の人にとって食事とは

『日常の生命維持のため(と言ってしまうと無味乾燥ですが)のモノ』

なわけで、消費(=需要)の大半はこちらです。

 

特別な日の食が重要であることに異論はありませんし、

特別な食材が話題に登りやすいことは確かなので、

そちら側に傾倒してしまうのはわかります。

ですが「農業界を良くしたい」「農家に稼いでもらいたい」と考えるのであれば、

消費の大半を占める【日常の食】【普段使いの食材】にも

JA含め民間事業者がもう少し注目してくれればなーと思う次第です。

昔から日本では、"ハレとケ"として区別してきたわけですから。