食と農のリテラシーブログ

主に農業のことを書いていきます

日本農業の問題の本質は『食料自給率の低さ』ではない

 

久しぶりのブログ更新。

日本農業の問題として

 

『食料自給率

 

が使われることに違和感があったので書いてみました。

ちょいちょい間違っているところがあると思いますが

大筋は外してないと思います。

書ききれない部分もあったので気分が乗ればいつか付け足します(たぶんやらない)。

(数値は基本的にセンサスから取ってきています)

 

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”食料自給率”という指標

農業問題を語る時に避けては通れなくなってしまっている食料自給率

この数値が指し示すものは

『私たちが消費している食料の中で国産のものは何割であるか』

というものです。

基本的には”カロリーベース”という指標が使用されます。

これは私たちが摂取しているカロリー(熱量)のうち何割が日本で作られたものか。

ということ。

昨年度はカロリーベースでの食料自給率が38%だったそうなので

ざっくり1日3食のうち2食が海外由来の食品だったことになります。

 

この食料自給率という指標

さも日本農業衰退と相関があるように使われますが

食料自給率の増減に関与しているのは”食生活”です。

 

”高カロリー”である砂糖や油、小麦などは

戦後の日本経済の回復に歩調を合わせるように消費される量が増えていきました。

日本人はこれまで米で摂取していたカロリーをこれらの食品に置き換えたわけです。

『食の西洋化』と言われます。

しかしながら日本の風土や気候がこれらの原料の栽培に不向きなため

砂糖(34%)、油(13%)、小麦(13%)と自給率は低く

また伸ばすには無理があります(砂糖は今頑張ってるみたいですが)。

つまり現在の食生活を続ける限り自給率の大幅な増加は見込めないわけです。

だからといって、イタリアンや洋菓子の美味しさを知った今、

食料自給率のために「食生活を変えよう!」という話にはなりませんよね。

 

問題の本質は”供給力”の減少

先日大学時代の友人の結婚式に列席していたときのことです。

恩師も列席されており席が隣だったこともあって農業談義に花が咲きました。

そのなかの一幕。先生が、

 

「農業生産を支えるものは『人×土地×技術』の3つ。

日本は人と土地の減少が止まらないことが最大の問題だ。」

 

とおっしゃいました。

首が外れるんじゃないかというくらい激しく首肯しました。

 

詳しく話していきます。

 

《人の話》

現在、日本で農業を仕事としている人は192万人ほどいますが

そのうちの65%を65才以上の人が占めます。

さらにそのうちの30%が80才以上の方です。

ざっくり37万人。

そもそもの年齢分布がかなりおかしいのですが

それよりも問題なのが長く見積もっても10年以内には

この層がごそっとリタイアしてしまうことです。

 

《土地の話》

80オーバーの人たちがリタイアすると

跡継ぎがいないため休耕地や耕作放棄地が激増します。

平成27年現在で農業生産が可能な面積は450万haと言われています。

仮にこの農地全部でお米を栽培したとすると

ざっくり1人1日あたり1800kcalの供給となります。

上手く配分できれば、です。

『少しでも分配を間違えれば餓死者が出てしまう』

のが450万haです。

どれくらいヤバイか伝わりますでしょうか。

また一度休耕地や耕作放棄になってしまうと

耕作できるようになるまで1年程度時間を要します。

休ませてしまえばすぐには使えなくなってしまうんですよね。

 

ということをお話すると、

「そんなちまちまやらずに、農地を集めて機械で大規模にドドッとやっちゃえばいいじゃん」

とご提案してくださる方が多々いらっしゃいます。

 

それ、できてたら苦労しないです。(泣)

 

農地の集積は平らな土地であることが基本となります。

日本のように国土の大半が山という国土では

大規模化しにくいんですね。

だから

『小さい面積でどれだけいっぱい収穫するか』

という技術を昔からひたすら磨いてきたんですね。

 

ということで日本農業の本質的な問題は

農業生産を支える”人”と”土地”が減ることで

食料を供給する力(供給力なんて言う人もいます)が減っていくことなんです。

別に自給率は高かろうが低かろうがどちらでもいいんですが

人も土地も減ってきちゃうと”なにか”があったときに対処できなくなります。

その危険性を知っているからこそ欧米各国は農業政策に力を入れるわけです。

 

これからは農業問題の記事を読む時は人と土地に注目してみてください。

ちょっと見方がかわると思います。

また、食料自給率で一喜一憂している人を見かけたら

したり顔で近づいていって

 

「問題はね、自給率じゃないのですよ。

問題の本質はね…」

 

と教えてあげてください。

きっと嫌な顔をされます。