世界の食糧需給と日本が被る影響
前回日本の供給力の脆弱性について書きましたが、
ついでに世界の需給バランスにも言及しておきます。
世界は今どのような食糧バランスにあるのか。
食料輸入大国日本はどのような影響をうけるのか。
なんてことをツラツラ書きます。たぶん。
————————
《ご飯を食べるすべての方へ》
”食のちょっと気になる”を知れるメールマガジンを発行しています。
登録してくれた方には
「簡単なのにオシャレなタマネギレシピ」
をプレゼントしています(^^)
https://m.teko-agri.com/p/r/8e611bAT
《農家の方へ》
農家さんに向けて、
営農のヒントとなるような情報を発信しています。
ぜひこちらもご登録ください◎
https://m.teko-agri.com/p/r/0wlC3ljS
————————
世界の食料需給
食糧需給の話をする際は”穀物”をベースとして進んでいきます。
穀物とは、米・大豆・トウモロコシ・小麦等。
これらの作物は
・保存が可能で
・摂取できるカロリーが高い
という特徴があり、人間の生命維持に不可欠な作物だからです。
またその論点は”供給”が”需要”を上回ることができるか。
の1点につきます。
ということで
『供給は上回り続けられるのか』
という観点でお話進めていきます。
需要について
この先世界の食糧需要は伸び続けると予測されています(グラフ参照)。
要因は2つ。
1つは開発途上国を中心とした人口の増加。
1つはBRICs等の経済成長による食肉需要の増加。
です。
特に影響を及ぼしそうなのが2つ目の食肉需要の増加です。
皆さんご承知の通りお肉ってエネルギー変換効率がめちゃくちゃ悪いんです。
・鶏肉1kg→穀物飼料3kg
・豚肉1kg→ 〃 7kg
・牛肉1kg→ 〃 11kg
です。
食肉需要が伸びるということは幾何級数的に穀物消費量が増えるということになります。
昨今中国の食肉消費量の伸びが著しくこの先さらに需要の増加が見込まれます。
こちらもグラフ貼っておきます。
供給について
穀物に限らず農産物の供給量は
耕地可能面積(km2)×単位面積あたり生産量(t/km2)=収穫量
という式で求めます。
単純に、面積×(面積あたりの)量、です。
つまり収穫量を増やそうと思えば
面積を増やすか量を増やすかのどちらかになります。
が、面積の増加には無理がありますので量を増やす道しか残っていません。
社会の時間で習った『緑の革命』もこの流れが前提にありました。
(緑の革命は基本的に是とする主張が大勢をしめていますが、それによる各農家の支出の増大や副収入源の減少等弊害も少なくありませんでした。ということは付け加えておきます。数字上は確かに改善しました。数字上は。)
そして現在、収量向上を目指して行われている取り組みが
ただ、安全性を疑問視する消費者(私もその一人)の反発もあり、
どこまで拡大するかは不透明な情勢です。
また植物工場等も脚光を浴びてはいますが
穀物の栽培を可能にするまでには至っておりません(単純に光量が足りないんです)。
枯渇しつつある地下水
様々な国で穀物の大規模な生産が行われていますが、
農業用水として”地下水”を使っているところが多々あります。
『小麦』を例に出しましたが、
大豆、とうもろこしも温暖で適度に乾燥した気候を好みます。
(というと多少語弊があるのですが、まぁ、とりあえず)
また乾燥地域の方が病気や腐敗等の心配が少ないこともあり
生産者的に栽培しやすいという理由から乾燥地に集中する傾向にあります。
こういうところに河川湖沼等のいわゆる”地表水”があれば問題ありませんが
そんな都合よくあるわけもないので地下水を使います。
一番話しやすいアメリカを事例として話していきます。
アメリカの穀倉地帯と言えば
グレートプレーンズという大平原なのですが、
そこも例に漏れず乾燥地です。
どーんと広くて気候は暖かく乾燥している。
作りやすいんですよね。
で、このグレートプレーンズで使われている農業用水が、
『オガララ帯水層』というところから汲み上げる地下水です。
氷河期に形成された超巨大な地下水なのですが、
流入量がほぼない”化石水”だと言われています。
つまり、使い続けていたらなくなる水なんです。
2050~70年の間にオガララ帯水層が枯渇するという試算がされています。
地下水の枯渇はアメリカの話だけでなくインドや中国、スペイン等でも深刻な問題になっています。
▼地下水が危機、今世紀半ば18億人に打撃(’16/12/28)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/122700501/
上記事にもありますが、
世界の食料生産の40%を地下水に頼っていますので
文字通り”世界的”に影響を与え得る問題です。
日本はどうなるか
中学校の時、
「『ミシシッピが凍ると日本の牛が風邪をひく』という言葉があってね…」
と社会の榎本先生が言っていました。
日本で使用される飼料穀物はアメリカからの輸入に大きく依存しており
水資源の枯渇により畜産業界は大きなダメージを受けるでしょう。
そもそも日本で使用されてる大豆の7割が米国産なので醤油、味噌、納豆業界も大打撃。
大豆は『サラダ油』としても使用されているので油業界も打撃。
となれば飲食業界も打撃、小売業も打撃、一般家庭も打撃…
ということで与える影響は計り知れません。
全世界的に生産力が減退することによって生じるコストを計算した人って誰かいるんでしょうか(どなたかご存知の人いらっしゃれば教えてください)。
とにかく計り知れない影響があります。
水が使えなくなるなんて農業する上で致命的です。
というわけで、世界の食糧供給基盤はかなり脆弱で、日本が被る影響もかなり大きいでしょう。という答え。
なんですが、
なんですが、一方で日本は全国的に大量に水を供給される環境にあります。
日本の平均年間降水量は約1,700mm。
世界平均が880mmなので約2倍の降水量です。
ちなみにアメリカが736mm、オーストラリアが534mm、中国が627mmです。
夏場の一時期水資源が減少することはありますが基本的に枯渇の心配はありません。
世界が地下水の枯渇に戦々恐々する中、日本はその点を気にしなくてもいいわけです。
というわけで、数十年以内に起こるはずの穀物の供給不足を見越してそろそろ本腰入れて対策をしていくべきだと強く強く感じる次第です。
という一文を書きたくてここまでツラツラ書きました。
おつきあいいただきどうもありがとうございました。