食と農のリテラシーブログ

主に農業のことを書いていきます

農産物輸出の促進は農家の所得向上に寄与するのか

こんにちは。

「農産物は生産地で消費するのが基本でしょ!」

地産地消”論者の横山です。

 

その意見は、

「いやいや、国内ばかり見ててもダメでしょ。

これからは輸出に力を入れていかないと稼げないよ。」

と主張する政府と真っ向から対立しちゃいます。

 

それはそれでいいんですけど

『輸出増で本当に農家にお金入ってくるの?』

『簡単に言うけど実はハードル高くない?』

ということを

 

グローバルGAP(=Global GAP)

(読み:ぐろーばるぎゃっぷ)

 

というものに焦点をあてて書いていきます。

お付き合いください。

 

目次

 

 

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そもそもの前提条件

 政府が海外市場を目指す理由は

『日本は人口が減っていくのでこのままだと持続性がないから』

なんだそうです。

 

政府の基本的な政策の方針が書いてあり毎年刊行される

”食料・農業・農村白書”

というものがあるのですが

その第2節の一番初めに

日本国内の食市場が縮小すると見込まれる 中で、人口の増加や経済成長等により更なる成長が見込まれるアジア地域や高所得者人口の多い欧米地域など、世界の食市場の獲得に向けて、〜

 と書いてあります。

『日本も高所得者人口を増やせば良いんじゃないの?』という指摘はさておき

 政府から

「農産物輸出を推進することで農業を稼げる産業にしよう!」

という熱い意気込みが伝わってきます。

 

増加する輸出額!だけど…

政府は2013年以降、着実に輸出額が増加しているとし、

2019年には輸出額を1兆円を達成したいと息巻いています。

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2016年は輸出額合計7,502億円のうち

6割にあたる4,593億円が農産物でした。

 

「農産物チャンス!」

と思うじゃないですか。

 

ここで内訳をご覧ください。

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実は総額7,502億円のうち31.4%(=2,355億円)が加工品なんですね。

農産物総額4,593億円のうち半分が加工品です。

 

加工品のうちきちんと数字が出てくる品目と金額が以下です。

(良い感じの資料がなかったので自作です。見にくくってすみません。)

 

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”農産物”の輸出額のうち約30%にあたる1,370億円がこれらの品目です。

ちなみに清涼飲料水に使われる『果糖ぶどう糖液糖』の原料はトウモロコシ。

基本的にはアメリカからの輸入に頼っています。

さらにちなみになんですが、

2010年度のデータ(古くてすみません)を見る限り加工食品の原料は

ほぼ90%を現地調達しています。

 

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日本からの調達は約6%。

ただ、味噌・醤油はなどは日本製にこだわる事業者も多いと注釈的に書いています。

それでも使用されるのは大豆と加工用の米なのでそこまで単価は高くない。

 

いずれにせよ

「輸出増えてるよ!輸出して稼ごうよ!」

と言われても

加工食品を作ってるメーカーにとっては良い話でも、

農家にとってはあんまり美味しくないよね

というのが現状なんじゃないでしょうか。

 

 

「いやいやお前何言ってんだよ。

『野菜・果物等』が5%

穀物等』が5%

あるじゃないか!

金額にしたら375億ずつ。

合計750億円!

チャンスじゃない!チャンス!」

 

 

とおっしゃる方がいらっしゃるのはわかるのです。

わかるのですが、この先が結構大変なんですよ。

 

 

立ちはだかるGlobal GAPの壁

ここまでが前置きです。

 ようやく本題に入ります。

グローバルGAPとは

GAPはGood Agricultural Practiceの略。

日本語訳をなんとするのかわかりませんが

「適正農業規範」と訳しているところが多いようです。

 

 

一言で表すのは難しいのですが、

「営農において適切な運営・管理をしていることを示す認証」

です。

 

 

様々なチェック項目が用意されており

野菜・果樹の認証の場合は

食品安全ー99項目

トレーサビリティー ー 22項目

作業従事者の労働安全と健康ー28項目

環境(生物多様性を含む)ー69項目

の計218項目となっています。

 

認証取得までの流れとその後

グローバルGAPの認証取得は

どれだけ早くとも半年以上はかかるようです。

取得後も1年おきに更新があります。

 

 

たまたま友人がグローバルGAP取得のお手伝いをしてたので

内情を聞いてきました。

 

 

結論から言っておきます。

 

 

 

曰く、

 

 

 

「めっっっっっっっちゃ大変」

 

 

 

とのこと。

 

何が大変かというといちいちかなり細かいんですよね。

 

 

 

 

例えば、

 

【作業場での異物混入】

 

というリスクの排除を求められます。

その時どんなことが考えられるか。

 

色々あると思うんです。

・うっかり置いてあったホッチキスの針が入ってしまう…

・作業着に付着していた泥や砂利が入ってしまう…

とかそういうの。

 

彼が教えてくれた実例は、

 

『作業場で使用している蛍光灯が落下して飛散するガラス』

 

とかなんです。

マジかよー。そんなの気づかなかったよー。

ってなりましたよ。私。

 

それで

「落下しても飛散しない飛散防止蛍光灯へ変更しようか。」

という風になったそうです。

 

あとは

 

『鳥が作業場に侵入する可能性』

 

など。

確かにそうですよね。

こちらも鳥が入ってこないような対策を求められます。

窓に防鳥ネットを張ったりなど。

 

「作業者の労働安全」についても

『ダボッとした服は裾を機械に巻き込まれやすいからピタッとしたのにしよう』

などが取り上げられたりするわけです。

 

 

徹底的に

”原因となり得るものを排除する”

という根気と強さと精緻さが求められる印象ですし

対策していくのになんだかんだでお金がかかっていきます。

 

 

他、細々言い出したらキリがないんですが、

各圃場毎に投入した農薬肥料の記録が取られているか

その記録の取り方は適切であるか

圃場で使用している水の重金属は基準値以下か

作業安全の講習を受けているか、その証書はあるか…

などなどなどなど。

様々なことを徹底的に問われることになります。

 

 

そして、

ですね。

このグローバルGAPなんですが、

取得にお金がかかります。

認証系はだいたいお金かかりますよね。

 

 

 

 

その額なんと…

 

 

 

 

1,500,000円以上

 

 

 

 

初年度は水質検査や土壌検査も求められるのでもっと高額になります。

そもそも自分たちでマニュアル読んでも通らないので

グローバルGAP専門のコンサルを雇ったりします。

さすがにコンサル料までは聞けてませんがそこそこの額だそうです。

彼の職場では補助金等を活用してやりくりしたそうです。

しかも団体認証だったからさらに高かったとか。。。

ほんと大変。

 

 

そして、

なんと、

 

更新料

 

もかかります。

それも

 

毎年

 

かかります。

 

その額なんと

 

 

1,000,000円〜也

 

 

がーん。

 

維持費で100万かかるってかなり大変です。

新品でもちょっとしたトラクターなら100万あれば買えますよね?

毎年トラクターと引き換えに維持費を払うことになります。

 

 

なぜグローバルGAPを取得しないといけないのか

ここまでしてなんでグローバルGAP取らないといけないか。

って話になるじゃないですか。

単純明快な話で、

『グローバルGAP取得が欧州市場進出の前提条件』

だからです。

持ってないと同じ土俵にすら立たせてもらえない。

 

 元々グローバルGAPはヨーロッパで誕生したんですが

流通がボーダレス化していく中で

『農業にも”同一規範”が必要だよね』

という流れの中から生まれました。

 

気候や土壌条件、事業者が違えども

同じ”規範”の下で作られたものであれば

同様の安全性が確保できる。

リスクを最小化できる。

というのが根底にある考え方です。

と私はみています。

 

よくよく考えれば、

様々な国や地域が、

さらに言えば様々な事業者が、

独自の基準や規範に基づいて栽培しているものを

同列に扱うことって

小売側からすればかなりリスクです。

 

『重金属の残留基準が

栽培する国と販売する国では全く違った』

 

みたいなことって起こりえますし

そうなったら営業停止じゃきかないですもんね。

 

そしてそれは栽培側にとっても意義あることだと思います。

一つの小さなミスでも法律や慣習が違う場所では大きな出来事になりかねず

致命的なダメージを与える可能性があるからです。

 

生産・小売共に共通の認識を持つというのは

消費者保護の観点からも非常に重要なことでしょう。

 

 

最重要ポイント

さてここで重大発表をします。

 

 

それは…

 

 

 

 

グローバルGAPを取得しても高く売れるわけではない

 

 

 

ということです。

 

 

 

がーん。

 

 

 

ものすごいお金かけて…

 

ものすごい労力をさいて…

 

 

それなのに高く売れるわけではないんです。

 

 

日本の有機JAS認定は

↓ このマーク ↓

 

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を貼れば高値で販売することができます。

小売価格でだいたい1.5〜2倍位。

 

 

が、グローバルGAPはそういう性質のものではありません。

”グローバルGAPが示す規範”

に則ることで

環境負荷の少ない、安全性の保証された、

 

”適切な農業”

 

を行うことができ、

 

結果として、

品質も改善される。

 

という考え方だからです。

 

記録を事細かにつけることで経営が改善されますし

イオンやCOSTCO等、GAP取得を取引の条件に、

据えている / 据えようとしている

ところもあるため、大規模小売への販路の拡大も見込まれます。

ただ、単価の向上を期待する類のものではありません。

 

農産物輸出のこれから

グローバルGAPについて書いてきましたが、

日本が狙っているもう一つの市場、

”アジア地域”

においてもGAPの制定をしようという流れが起こっています。

日本版GAPでJGAPというものがあるのですが

それを高温多湿なアジア地域に対応した

アジアGAPとして同一規範を持とうというものです。

また、上述の例のように、

大手小売と契約するにはGAP取得が前提

という事例がこの先増えてくることも十分考えられます。

 

 

 

そもそも認証にかかる費用を捻出できる事業者はかなり限られています。

認証側もあえてハードルを高くすることで

参入者の乱立を防ごうとしている節があるように見えます。

いずれにせよ日本にとっての農産物輸出は

資金の潤沢な大規模事業者

ないしは

優良農家をいくつも抱える単協

のための事業になっていくんだろうなーと見ています。

たぶん大多数の農家にとっては縁遠いものとなるんじゃないでしょうか。

 

 

小規模農家の道

全然楽しくない話ばっかりしたので最後に希望のある話を。

『政府が輸出に傾倒する中、小規模農家はどうすればいいの!?』

って問に対する回答になるかわからない回答を。

 

小規模農家は国内、さらには地域内を目指せばいいんだと思います。

日本って人口1億2千万いるんですよ。

一番人口の少ない鳥取県でも58.8万人います。

十分じゃないですか。人の数。

 

 

そもそも農産物貿易が工業製品並みに活発化しない背景には

”腐敗する”

という農産物特有の理由があるからです。

 

時間をかけて大きなマーケットに流すのであれば

地域内循環に組み込んでしまったほうが良いよね。

そっちのがロス少ないし。

という至極当然のところに立ち返ればおのずと結果はついてくると思います。

そもそもそっちの方がかかる経費少ないし。

このあたりはまた折を見て書ければと思ってます。

 

 

以上、

『農産物輸出は一部大規模事業者のものだ』

ということを書きました。

お付き合いいただき、ありがとうございました。