ゲノム編集食品は本当に安全なのか?
この記事は2019年3月に書いたものです。
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
よこやまです。
先日気になるニュースを見かけました
「ゲノム編集食品ってなに?」
「遺伝子組換えとどう違うの?」
「安全なの?」
と矢継ぎ早に質問が出ると思うんでちょっと調べてみました。
最後には個人的な意見も載っけてますのでぜひそちらまでご覧ください。
ゲノム編集食品ってなに?
恥ずかしながらゲノム編集食品という単語を存じ上げなかったので、
「恥ずかしい(>ω<)」
となりながら調べました。
とりあえず『ゲノム編集』のウィキペディア
”思い通りに標的遺伝子を改変する技術”
とあります。
これだけじゃちょっとわかりにくいですけど、
遺伝子をちょっと変えることで人に有用な形質を発現させる
品種改良の一環だということみたいです。
ゲノム編集を行うことで、
- 病気に強くなる
- 収量が増える
などができるようになるそうです。
また、植物だけではなく動物に関しても、
- マダイが肉厚になる
- マグロがおとなしくなる
などなどができるようになるそうです。
従来の品種改良って突然変異したものを固定化したり
色んな個体をかけ合わせたりして行うんですけど
それだったら不確実性が高いし
手間も時間もめちゃくちゃかかるよね。
けど遺伝子を変えちゃえば簡単に確実にできるよね。
というのが遺伝子組み換えやゲノム編集の考えみたいです。
遺伝子組み換えとどう違うの?
上に挙げた日経新聞の記事では、
《遺伝子組換え》
微生物などの別の生物の遺伝子を入れることで、農薬や害虫に強い品種を作る。
《ゲノム編集》
遺伝子を切断して働きを止める方法によって作物自体の遺伝子を改変する。
とある一方…
ゲノム編集には新しい遺伝子を挿入する方法もある。
とあってちょっと何が違うんですかね状態になりました。
この議論の前提となる審議会の議事録と資料を突き合わせて読んだ結果
ゲノム編集の場合は、
他の遺伝子を組み込んだものと組み込んでいないものを掛け合わすなどして、組み込んだ遺伝子が残らないようにする。
ということなのかなという結論になりました。
とりあえずこの前提で話進めたいと思います。
国会でもこれらの技術の違いを安全性とからめて議論されています。
ちょっと長くなるんですけど正確にお伝えしたいので議事録からある程度そのまま抜粋します。
第197回国会 消費者問題に関する特別委員会 第4号
平成30年11月20日(火曜日)
「食品表示法の一部を改正する法律案」
ゲノム編集食品についての質問をしたのは立憲民主党の初鹿議員。
初鹿:この夏から、ゲノム編集の食品また作物についての議論が始まっている*わけでありますが、このゲノム編集の食品をどう扱っていくのかということを私は非常に注目をしております。
*薬事・食品衛生審議会という審議会の食品衛生分科会で話し合われてるようです。
ちなみに審議会の議事録はこちら。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000475606.pdf
初鹿:ゲノム編集というのはどういうものかというと〜
もともとある遺伝子の一部を切り取って、そしてくっつけていくというもので〜
外部から別のものを持ち込んでいるわけではないから遺伝子組み換えではないということと、
自然の中でも遺伝子が組み換わっていくこともあるから、
自然のものと同等なんじゃないかということで〜
ということで、
『外部から別の遺伝子を持ち込んでそのままにしている』
のが遺伝子組換えで、
『そうじゃないのがゲノム編集』
という認識でいいんじゃないかと思います。
ちなみに
なんで遺伝子組換えかそうじゃないかが議論されるのかと言いますと、
遺伝子組換え生物に関する色んなことが定められている
カルタヘナ法という法律があるんですが、
ここで遺伝子組換生物は安全性の検査をしないといけないと定められてるんですね。
事業者からしてみればカルタヘナ法の対象になるかならないかは大きな分岐点なんですね。
だからどこまでが遺伝子組換えなのか、どこまでが安全性審査の対象になるのかが重要なんだと思います。
ゲノム編集食品は安全なのか?
先程の続き&繰り返しになりますが、国会でも安全性の面が最も懸念されています。
初鹿:対応の仕方として、これ(ゲノム編集食品)を遺伝子組み換えの食品と同等の扱いをしないような方向も打ち出されてきている。
外部から入れていないから、そして自然でも起こり得るから安全だと言われても、
切り取っているわけで、それによってどういうことが生じるのかということをやはりきちんと確認をしていく必要はあるんだろうというように思っております。
欧州では、欧州の司法裁判所は規制の対象にするべきだという判決をしているわけであります。
一方、米国の方では、規制の対象外にするということなんでありますけれど~
日本は、欧州に倣って、安全性が~はっきりするまでは規制をしていく必要があるんではないかと思いますがいかがでしょうか。
ということで
「規制対象にした方が国民にとっては安心ではないか?」
と問うわけですが、政府は、
新谷大臣政務官:今年度末までに、ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生法上の取扱いを明確化する予定でございます。
と『検討します』で終わるわけです。
で、実際の安全性はどうなのかというと…
非常に恐縮なんですが…
わかりません
の一語に尽きます。
遺伝子を切ったり貼ったりちょろっと変えてみたりすると
発現するタンパク質が変わるんですけど、
遺伝子組み換え食品の安全性審査の場合は、
そのタンパク質の有害性やアレルギーの誘発性なんかが審査されます。
が、食事はその食品単品を取り続けるわけじゃないので、
それらの組み合わせの中で大きな変化が起こらないかもチェックされます(そうです)。
ただ、
ただですよ、
食品の組み合わせって膨大な数あるじゃないですか。
そしてそれを加熱するしないとか
加熱するにしてもどこまで加熱するかとか
考えられる組み合わせは無限に近いと思います。
だからわかんないんですよね。
科学が言えるのは、
「この作物はこの遺伝子を変えたものです」
「〇〇、XX、△△の実験では有害性やアレルギー性は確認できませんでした」
っていう”事実”だけなんです。
なのであとは個々人の判断になってくるんだと思います。
「ゲノム編集のしかも自然に起こり得るのと近い方法で品種改良された栄養価の高いトマトは食べるけど、
遺伝子組換えに近い方法で作られた肉厚マダイは食べない(例は適当)」
とか。
そういう判断が必要になってくるんだと思います。
ほんと消費者側の食に関するリテラシーが求められる時代になりました。
安全性を度外視した私の(一応の)専門的見地から
一応農業経済学という分野を専攻していたんですけど、
最後にその分野から見えるものを書いて終わりにします。
ゲノム編集食品も要は品種改良なので
- 可食部(食べられる部分。稲ならお米の部分)を増やす
- 栄養価や食味等を高める
- 病害虫等の耐性を高める
あたりが目的になるんだと思います。
栄養価や食味は置いといて、
《可食部を増やす》と《病害虫耐性を高める》
の2つは全体的な生産量の増加に寄与します。
可食部が増えることで収量が増えるし、
病害虫耐性が高まることで減収の可能性が小さくなるからです。
これらの結果、
食料の安定供給や安全保障という面は向上すると思いますが、
一方で、農家、特に小規模農家の収入が減少する可能性が高まります。
なぜかというと…
生産量が増加すると、市場に出回る量が増えます。
需要と供給のバランスで価格が決まるので、
供給量が増えれば価格は下がります。
価格が下がった場合、販売量を増やして対応するわけですが、
一人あたりが消費できる量は決まっているため増産で対応するには限界があります。
また、各農家が増産することで余計に価格が下がります。
ということは、価格を下げてもやっていけるような
体力(=資金力)がある農家でないと生き残りが難しくなっていきます。
つまり…
価格低→量増→価格低→…
となるわけです。
緑の革命と農家収入
今から6~70年前、世界的に大規模な品種改良が行われました。
緑の革命って言うんですけど。
おかげで収量が飛躍的に増加しましたが価格が下がり農家の収入が減少しました。
また、農薬や化学肥料などこれまで使用していなかったものを購入する必要が出たため支出が増加しました。
ただ、主食が安価で手に入るようになったため、
緑の革命がなければ飢餓人口はさらに増えていただろうという指摘もあります。
日本では
これからも世界人口は増加していくので生産量を増やすための品種改良は必要だと思いますが、
日本は人口減少期に入っているためいたずらに増産していっても食うに困る農家が増えていくだけなんじゃないかと思っています。
(そのため?)政府は農産物の輸出促進をうたってるわけですが、
農家の所得向上にはつながらなさそうです。
じゃあゲノム編集食品が何ももたらさないの?
と言われればそういうわけではないと思っていて、
(安全性や実現可能性は度外視した上で)
小麦やソバなどのアレルギーを抑えるような品種が作ることができれば
沢山の人が恩恵を受けられます。
増収や栽培の容易さも確かに重要なんですけど、
栽培の先まで見据えた品種の開発が(難しいと思うんですけど)できればいいのかなーなんて勝手なことを考えみました。
最後に
どんな技術であっても完璧なものって存在しないと思いますし、
食に関しては100%安全だって言い切れるものはないと思います。
だから、この技術がどういう技術であるかということをきちんと説明した上で、
消費者が自ら選択できる状態であるということが最も大事なのかなと思います。
まずは情報の開示が必要だということと、
繰り返しになりますけど、消費者の側にもリテラシーが求められるようになったなとしみじみと感じ入りました。