「ちょこざいなっ!」

お酒を飲みながら日々の雑感をダラダラとつづるブログ

主要農作物種子法廃止について

あまり言及している人がいないのですが

かなり重要な問題だと思うので書いておきます。

 

【主要農作物種子法】(以下、種子法)

とは、

稲・麦・大豆の優良品種の生産・普及を促進するため

都道府県にこれらの品種の元となる原種や

原種のさらに元となる原原種の

維持・確保を求めるための法律です(と解釈しています)。

 

『種子法の存在が民間企業の参入を阻害し

ひいては”健全な競争”の弊害になっている。

ゆえに種子法を廃止するのが農業界のためになるのだ』

というのが政府の主張です。

 

そんなわけなかろう

 

という論を以下に展開していきます。

ご査収ください。

 

 

種子法廃止の背景

種子法の廃止は、

農業競争力強化支援法案とセットで今国会にあげられました。

1.生産資材価格の引き下げ

2.流通加工の構造改革

を通じて『農業の競争力を高めていこう』というのが主目的です。

(この法案も看過できない中身なのですが

膨大な文量になってしまうので今回は種子法に絞って書きます)

本法案は昨秋政府与党がまとめた

農業競争力強化プログラムに沿った内容となっているので

そちらを参照しながら進めていきます。

資料は以下にまとめておきますのでご参考ください。

 

1.の中に

生産資材に関する各種法制度(肥料・農薬・機械・種子・飼料・動物用医薬品等)及びその運用等(法律に基づかない業界団体による自主的な規制も含む)について、国は定期的に総点検を行い、国際標準に準拠するとともに、生産資材の安全性を担保しつつ、合理化・効率化を図る。特に、合理的理由のなくなっている規制は廃止する。

戦略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する。

そうした体制整備に資するため、地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法を廃止するための法整備を進める。

とあります。

要は、

・種子法の存在が民間企業の品種開発意欲を削いでいる

・民間の力を活用できていないのは農業界にとってマイナスだ

・だから種子法を廃止しよう

というのが背景です。

 

種子法とは(もう一度)

繰り返しになって恐縮ですが種子法とは、

『稲・麦・大豆の優良品種の資源資源の確保を都道府県に課す』

ための法律です。

 稲・麦・大豆とわざわざ指定しているのは

それが日本における基幹作物(特に稲)であり

日本人のカロリー源(特に稲)だからです。

これら作物の遺伝資源の維持・管理はかなり公益性の高い事業であり

よって公的機関がその役割を担うことになんら不思議はありません。

だってこの遺伝子なくなって困るのは国民だから。

 

そもそも、その他の野菜はかなり民間が品種開発してます。

タキイ種苗”とか”サカタのタネ”あたりは

ちょっと土いじりする人なら誰もが知ってる民間種苗メーカーです。

さらに言えば種子法を読む限り

それ相応の規制は設けているものの

民間企業の参入を禁止した条項はありません。

(間違えているようでしたらご指摘ください)

「民間の力を活用しきれていない」

のであれば

『”規制要件の緩和”を含めた

”法改正”で対処すればいいじゃない』

と思うのですが

国は、『それではダメなのだ』と言うのです。

 

種子法廃止で懸念されること

種子法廃止論議で毎回かならず出てくるのが

外資による乗っ取り”

の危険性なのですが

みなさんうんざりしてると思うので別の視点を。

 

www.agrinews.co.jp

上の記事内で財源について重要な指摘がされているので引用します。

都道府県は育種費用を、使途の決まっていない一般財源から確保している。軒の農業試験場が育種費用の確保を財政当局に訴える際、同法を根拠としていた実態もあるため、同法の廃止で十分な額が確保できるのか懸念の声がある。

ここ最近、農林水産予算は漸減していますし

種子法が廃止されれば育種費用は間違いなくカットされるでしょう。

となれば品種の開発は民間に依存することになります。

 

主要作物は(種子法を根拠に)

都道府県ごとに”奨励品種”が定められています。

奨励品種とは

『その都道府県に普及すべき優良な品種』

なのですが

地域の気候特性に応じて育てやすい品種が採択されます。

北海道と九州では気候風土がまったく違うため

栽培しやすい品種は当然ながら異なります。

”各地域に応じた品種の開発”

という細やかな対応ができるのも

”公的機関であるからこそ”

なのですがそれがなくなるかもしれないということです。

 

となれば遺伝的多様性が失われることになります。

今でさえ、米の品種改良はコシヒカリに偏重しており

遺伝的多様性の減少を指摘されているのに

私企業に依存してしまうとなると

その傾向に拍車がかかる可能性が少なくありません。

(というかそうなると思います。

だって企業にとっては”売れる米”しか必要ないんだから。)

定常状態にある分にはそれでもかまわないのですが

異常気象や新たな病害虫の発生が叫ばれる中

遺伝的多様性の縮小は命取りになり得るやもしれません。

 

つまり、

「万が一何かが起こった時にお米が全滅するかもね。

しかもそれが何年も続いたらどうするの?」

って話です。

去年の北海道への台風襲来による

タマネギやジャガイモの高騰は

様々なことを示唆してくれたと思っています。

(ポテチも一部商品が販売休止になるし)

それが、米や大豆や小麦に及べばこの比ではないほど

大騒ぎになるはずです(Remember 93年)。

そもそも私企業に任せた場合どうしても

寡占や独占の可能性がつきまといます。

「手軽に手に入っていた種籾が

入手し難くなった。価格が高騰した。」

となる可能性もかなりの割合で秘めています。

そんなことまで考えて議論してくれているんでしょうか。

本当に心配になります。

 

以上、足早でしたが、

Q.種子法の廃止って農業界にプラスになるの?

A.そんなわけあるか

でした。

 

参考資料

主要農作物種子法

・農業競争力強化プログラム

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/nougyo_kyousou_ryoku/attach/pdf/index-1.pdf

農業競争力強化支援法案

・近年の農林水産予算

https://www.yamada-toshio.jp/minutes/pdf/090520_02_02.pdf

 

2017/4/14追記

この問題で一番大きいと考えているのが「遺伝資源の減少」です。

環境の変化が激しい世の中で多様性こそが人類にとって最大のリスクヘッジだと考えてるんですけど、資本の論理って基本的に多様性を是としないんですよね。

均一な方がコストかからないから。

民間に預けちゃうとどうしても"均一な方"への圧力がかかるからよくないよね。って話をしたいんです。

別にモンサントが悪いわけじゃないんです。あの会社はあの会社で立派に経済活動しています。

日本農業界における『JA悪玉論』と同じでモンサントを叩くことに意味はないと思います(もちろん看過できないこともありますが)。

市場経済と食糧安全保障って相性が悪いよねってだけの話です。

食料、というか食料というか農作物も、経済的な農作物と、安全保障としての農作物と分けて考えないといけない。

 

ライフスタイルが狩猟採集から農耕牧畜に変わり、人類の"食(=エネルギー源)の依存先"はとてもとても少なくなりました。

現在は穀物や芋(一部寒冷地域の人たちは動物の肉)を主たる供給源としていますが、これに変わるものはまだ見つかっていないので(光合成できるわけでもないし)人類を生き永らえさせるためにはその少ない依存先の中の多様性を維持もしくは拡大するしか道はないわけです。

今回の種子法廃止や世界の農業の現場で今起こっていることはこれに逆行することです。

人々が一時の快楽を手に入れることを是とするのか

それとも

人類を生き延びさせることを是とするのか

何を世界的な目的とするのか。

それが問われてるんだろうと思います。